萩といえば、毛利氏37万石の城下町として栄えてきたところです。幕末にはその不便さから、現在の山口県の県庁が置かれている場所へ移動しますが、250年の江戸時代毛利藩の中心地として重きを成してきたところです。
日本の数ある城下町の中でも、これほどの規模で当時の城下町が保存されているのは、この町が幕末の藩庁移動によって皮肉にも歴史の流れから見捨てられたことにあるわけですが、そのおかげで都市開発の波にも洗われることなく、写真のような歴史遺産として私たちの前に今もなお当時の姿を残しているわけです。歴史とはまったく皮肉なものです。日本の歴史を切り開いた人々の生活空間が、歴史の流れの忘却の中で、大切に保存されてしまう、歴史の面白みを感じます。
萩の城下町がサムライの時代に止めを刺し、明治という新しい時代を招来したことについては、くどくどと説明するまでもないことです。近代日本を誕生させた城下町として、日本人なら一度は足を踏み入れるべき空間と思います。高杉晋作、桂小五郎、久坂玄端、伊藤博文、山県有朋、井上馨、そして吉田松陰、かれらを大きな懐で自由に活動させた藩主毛利親敬、かれらがこの地で何を思い、何を感じて時代を生きたか、この現場に立つと、考えさせられます。
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