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No.24

ザビエル 日本上陸の地




 ザビエルとヤジロウが歴史的邂逅を経て、ザビエルはヤジロウの知性に感動し、ぜひこのように理性高き人々のいる日本という国でキリスト教を布教させようと決意します。
 ザビエルが日本布教の決意を抱いて、ヤジロウを伴いマラッカの港を中国人船長の操る船て出航したのは1549年6月24日のことです。
それから約50日余りの航海を経てヤジロウの故郷薩摩に上陸します。
1549年8月15日のことです。
 写真はその上陸地点とされているところです。現在の鹿児島市祇園の州田ノ浦付近と推定されています。このあたりは、当時河川が海岸から内陸部まで入り込んでいたようです。現在では あたりにマンションなどが建設され当時の面影は何も残されていませんが、錦江湾と桜島だけは当時の姿と変わることはないでしょう。
彼らが 東シナ海から錦江湾に入ると、まずは根占、山川といった外国船が多く停泊している港があり、そこにまずは入ったのではないかとも考えられますが、現在では確定した証拠はなく、当時島津氏が拠点を置いていた鹿児島に直行した可能性を採用します。
 さて鹿児島に上陸したザビエルとヤジロウ一行は、薩摩大隈を統一しつつあつた島津貴久を表敬訪問するわけですが、この会見場所については現在でも二説あります。
まずは、通説となっているのは当時島津貴久が本城としていた一宇治城(現在の伊集院町)会見説。もうひとつの説は、錦江湾の奥国分にあった清水城で会見したという説です。
ザビエルの書簡による鹿児島から約30キロ程度の行程のところで会見したということくらいしか証拠がなく、鹿児島の上陸地点から約30キロの地点で、当時の情勢から島津貴久が在城していたであろうと推測されている場所が、一宇治城と清水城のふたつの場所が浮かびあがってくるからです。
 現在では、一宇城にすでにザビエルと貴久の会見場所の記念碑が建立されていて、一宇治城説が既成事実になりりつつありますが、まだ国分の清水城説を主張する人々もます。
 島津貴久に会見し、キリスト教の布教許可をもらったザビエルは早速鹿児島の地でキリスト教の布教活動が始まります。しかしザビエルの思惑とは何かが違っていました。 
 当時の薩摩人々はザビエルの解くキリスト教を新しい仏教の一派として認識していたようです。ヤジロウの通訳を通じて、キリスト教の神は大日如来に翻訳されたり、当時の日本人に理解できる概念を使って解かれていきます。古来日本人は仏教は遠い西の天竺から来たものと考えていたわけですから、ポルトガル人の持ってきたキリスト教も西の天竺あたりからきた新しい宗派くらいだろうとの認識だったろうと思われます。
 地元の僧侶たちの間でもそのような程度の認識であったらしく、はじめのうちは親しくザビエルたちと議論を交わしていたようです。同じ仏教における禅問答程度の認識だったわけです。ところが、ザビエルは当時の僧侶たちの腐敗ぶりを容赦なく徹底的に糾弾してくるうちに、どうやら自分たちの仏教とは違うんじゃないのか、という雰囲気になります。最初は好意的に歓迎してくれていた周囲の人々も、次第にザビエルたちのキリスト教がそれまでの仏教などとは相容れない厳格な協議であることがわかり始め、領主の貴久の方でも、目当ての貿易による利益に期待できないとなれば、それほど手厚い保護も与えなくなります。
 こうして日本最初の地鹿児島での1年余りの布教に終止符をうって、日本国王の布教許可を求めて京都に上って行くことになります。
 ザビエル日本上陸のこの地は、日本と西洋近代が出会った記念すべき場所のはずですが、訪れる観光客もほとんどなく、ザビエルが鹿児島に上陸したことすら、日本人の多くの意識の中には存在してないのかもしれません。種子島とポルトガル人との出会いは、《種子島銃》という技術によって瞬く間に日本人の意識の中に浸透していつたものの、キリスト教については、秀吉から江戸時代の禁教政策によってなじみの薄いものへと変化していったのが大きな理由と考えられます。
 ザビエルが薩摩で見たもののなかで驚愕したものは、島津氏の紋章とザビエルたちの十字架があまりに似ていることでした。
 島津氏の十字紋は、昔は縦長の十字だけで、江戸時代になって丸で囲むようになります。ほとんどの研究者も島津氏の紋章にキリスト教との関連性を見るものはいないようですが、キリスト教は、何もザビエルが最初に日本に伝えたものとも限りません。
 文書によって確認される史実として、ザビエルが最初だと通説になっているだけの話です。ザビエルがヤジロウの案内で、島津氏の薩摩にキリスト教を連れてきたという歴史的事実も、何か大きな運命の糸を感じます。

 

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